2022年私的ベストソング15選
今年もたくさんの素晴らしい音楽に出会うことができました。毎年、その年にリリースされたお気に入りの曲を個人的にまとめているのですが、今年は文章にしてまとめようかと思います。
ジャンルの縛りなしですが、好みの傾向からJ-POP, K-POP, ジャズ, R&Bを中心とした選曲になっています。気軽に読んでいってもらえれば嬉しいです。
目次
- 1. 時空怪盗 / 多次元制御機構よだか
- 2. Trip / PAJAUMI(パジャマで海なんかいかない)
- 3. CUFF IT / ビヨンセ
- 4. Outer Space / Peter Somuah
- 5. MVSK / Kep1er
- 6. Hype Boy / NewJeans
- 7. ABC(feat. Sophia Black) / ポリフィア
- 8. Yu / KOSO ×JZFZL
- 9. Wellmade / CRCK/LCKS
- 10. 私は最強 / ウタ(Ado)
- 11. 光るとき / 羊文学
- 12. 旅行 / 柴田聡子
- 13. 蕾に雷 / 花譜×長谷川白紙
- 14. Softly, as in a Morning Sunrise / Tigran Hamasyan
- 15. Worldwide(feat. JPRK) / edbl & Kazuki Isogai
1. 時空怪盗 / 多次元制御機構よだか
1曲目は『時空怪盗』!強烈に爽快感のあるギターロックです。
「多次元制御機構よだか」というのは、ギターボーカルの林直大(ハヤシング)さんのソロプロジェクトです。元々フィッシュライフというバンドで活動していましたが、数年前に解散しています。
バンドの頃から、鮮やかなギターサウンドや疾走感のある曲調が魅力的でしたが、この曲ではその魅力が突出して現れています。ギター、ベース、ドラム各パートが前へ前へと推進力をもち、楽器隊のグルーヴをボーカルが乗りこなしている、といった感覚を覚えます。邦ロック好きは必聴の1曲です。
2. Trip / PAJAUMI(パジャマで海なんかいかない)
PAJAUMIは、ネオソウル〜ジャズを基調とした日本の5人組バンドです。
この曲『Trip』は、変拍子やテンポチェンジといった、ジャズらしい難解なアプローチをしているにもかかわらず、全体としてはキャッチーで心地よく聴ける曲に仕上がっているのが特徴です。
また、曲中で様々な展開が見られますが、それらがスムーズに接続しているのも魅力の一つでしょう。
素人が演奏面に言及するのは恐縮ですが、ベースとシンセの「音を切る/伸ばす」が非常にはっきりとしていて、それがビートのノリを明瞭に表しているように聴こえます。この明瞭さが、結果としてスムーズな展開を生み出しているのかもしれません。
Robert GrasperやMoonChild、WONKあたりが好きな方にはぜひ聴いてほしいです。2023年もPAJAUMI応援していきます。
3. CUFF IT / ビヨンセ
今年の名盤、ビヨンセの『Reinessance』から、好きな曲を1曲選びました。
アルバム全体を通してただ圧倒されるばかりですが、『CUFF IT』は特にお気に入りです。曲調はスタンダードなハウス風ですが、音の切り方、重ね方、存在感のあるコーラスワークなど、随所に洗練された仕事が見受けられます。同時に、そういったポイントの積み重ねで、曇りのない名曲が出来上がっていることをひしひしと感じる1曲です。
個人的に、世界的に有名なポップスはなんとなく食わず嫌いしてしまうのですが、本当に悪い癖ですね。このアルバムを聴いて反省しました。世界中で売れ続けるのはきちんと理由があるんだな…。
4. Outer Space / Peter Somuah
続いてはジャズ。ガーナ出身でオランダで活動しているトランペッター、Peter Somuahのデビュー作から。
私はなんだかんだ、アップテンポでズンズン盛り上がるジャズが大好きなのですが、この曲はまさに"私が聴きたかったジャズ"でした。
ダンサンブルなベースから始まり、アフリカ音楽を想起させるノリのテーマへ。フレージングが多彩なトランペットソロに合わせてアンサンブルはじわじわと盛り上がり、続くサックスソロでピークに達します…。聴いていてとにかくワクワクするし、楽しい!
ちなみに、動画ではサックスソロ中にPeter Somuahがノリノリなのが見ていて楽しいです。
5. MVSK / Kep1er
K-POPから2曲。1曲目は今年デビューした9人組女性グループKep1erの『MVSK』です。
1月に『WA DA DA』でデビューしたKep1erですが、デビューEPの収録曲であるこの『MVSK』がずば抜けて格好良かったなと感じました。
特筆すべきはAメロの後の展開。動画では33秒あたりからです。
Aメロが終わり、Bメロ(らしきパート)に入りますが、「Mask!」の掛け声と同時に突然音が消えます。そして2拍無音が続いたのちに、先程の半分のテンポで次の展開に進みます。
文章で書くと何が起こっているか全然伝わらないですが…笑 初めて聴いた時には「Mask!」の後に盛り上がりがドカンとくると思っていたので、この展開は驚きでした。これがBメロの二段構えなのか、それともサビの二段構えなのかはわかりませんが、突然の無音によって一気に曲に惹き込まれるのは確かです。
クオリティの高い楽曲が次々と現れるK-POP業界ですが、この曲はリスナーの記憶にしっかりと刻まれる良曲だと思います。
6. Hype Boy / NewJeans
今年の夏にデビューしたNewJeansですが、同じ曲でもメンバーごとにMVを用意したり、ストーリー調のMVを2本出すなど、オリジナリティ溢れるコンテンツで注目を集めていました。
リリースされた楽曲の中でも、Hype Boyは一聴して面白い曲だなと思いました。
イントロで、3連符の目立つシンセのメロディが繰り返されるのですが、歌唱に入るとそのメロディは鳴りを潜ませ、推進力のあるシャッフルビートが前に出てきます。しかし、サビでイントロのメロディが再び登場、Aメロから続くシャッフルビートとうまく絡み合い、浮遊感のあるグルーヴを生み出しています。
イントロでのメロディは重たく・平べったく聴こえるのですが、サビで再登場したメロディは、同じものなのに心なしか軽やかに聴こえますね。
こういった楽曲の随所に見られる仕掛けも、グループとしての魅力を引き上げているのではないでしょうか。
7. ABC(feat. Sophia Black) / ポリフィア
初めて聴いた時には頭が全く追いつきませんでした。
アルファベットを2小節で全部歌い切る、突然日本語のギャルが現れる、そしてそもそもめちゃくちゃギターが上手い…。何度でも聴きたくなる・観たくなってしまうし、しかし何度リピートしてもよくわからない作品です。
楽曲としては、コードの感じや、ビートの隙間を広くとるようなアプローチなどから、EDMのジャンルの一つであるFuture Bassのような趣があります。曲の後半、緩急をつけながらテクニカルなフレーズが次々とハマっていく様には、音ゲーのコンボが積み上がっていくような爽快感を覚えました(それこそMVで音ゲーがネタにされていますが笑)。
ちなみに、フィーチャリングされているSophia Blackは、ロサンゼルスを拠点とする日米ハーフのシンガーとのこと(参考:激ロック)。こんなクセの強い歌詞をすらすらと歌い上げられるセンスに脱帽です…。
8. Yu / KOSO ×JZFZL
Youtubeで突然レコメンドされたヒップホップです。
アーティストの素性はほとんど不明で、Youtubeチャンネルからジョージアのアーティストであることは推測できるのですが、如何せんそれ以上の情報は出てきません。
ただ、単に物珍しさで選んだわけではありません。全体的に非常に洗練されており、物静かな知性と秘めた情動を兼ね備えたような、聴き応えある一曲だと感じました。特に中盤以降の、2つのコードを行き来しながら徐々に熱量を上げていく展開は、どこかネオソウルやジャズのような雰囲気が感じられ、聴いていてゾクゾクします。
ぜひとも次回作も聴きたいです!
9. Wellmade / CRCK/LCKS
5人組ジャズポップスバンドCRCK/LCKSがシングルリリースした一曲です。
落ち着いた立ち上がりから、4拍子と7拍子を行き来しながら巧みに展開が構築されていきます。ラストの楽器陣の盛り上がりは、全体の浮遊感ある曲調も相まってカタルシスに近いものを覚えました。
CRCK/LCKSの曲では『傀儡』が特に好きなのですが、Wellmadeはそれに近い雰囲気があり、序盤は音数が少ないゆえにVo.小田朋美の歌声に注意が向きます。気怠そうだったり儚げだったりと、表情豊かに聴こえますが、それが野暮ったくないというか、味付けが濃すぎないというか、心地よく受け入れられるのが魅力的に感じられました。
決して派手ではないからこそ、何回も聴いてしまうような楽曲です。
10. 私は最強 / ウタ(Ado)
音楽をある程度好んで聴いていると、なんというか、ド定番の曲は大手を振って言及はしたくない、といったような自意識がどうしても生まれてしまいます。しかしこの曲には抗えません…。本当にパワフルで素晴らしい楽曲だと思います。
なんといっても、"1番のサビで前半8小節を丸ごとスネア連打に使う"というのは、聴いていてテンションが上がらざるを得ません。
サビ終わりの「私は最強」のハイトーンに最高到達点をもっていく構成には、布施明の『君は薔薇より美しい』を連想するような様式美を感じます。
ちなみにこの曲は映画『ONE PIECE FILM RED』の劇中歌で、歌唱はAdo、作曲はMrs.GREEN APPLEの大森元貴が手がけています。多くの方が抱いた感想かと思いますが、Adoが想像以上にミセス節にフィットしていて驚きます。彼女のこの曲調の歌をもっと聴いてみたいですね。
11. 光るとき / 羊文学
アニメ『平家物語』のオープニングに起用された一曲です。歌詞が大変魅力的で、ピックアップしました。
平家物語のテーマと相まってか、盛者必衰というか、どこか「終わり」を明確に意識するような言葉が散りばめられています。しかしながら、その「終わり」について、決して諦観や憐憫に終止させているわけではありません。むしろそれら負の感情を受け入れたうえで、現状を肯定することを促しているような、そんな力強い歌詞になっています。
何回だって言うよ 世界は美しいよ
君がそれを諦めないからだよ
羊文学の歌詞は、寄り添うような優しい言葉遣いなのに、時々大事なところを鋭く言い切るのが心地良いんですよね。決して虚栄を張っているのではない、わざとらしくない前向きさを受け取れる曲だなと思いました。
12. 旅行 / 柴田聡子
柴田聡子さんは前作アルバム『がんばれ!メロディー』からハマって、3年くらいひたすら聴いていますが、この『旅行』もとてもしっくりくる一曲でした。
「旅館で聴くサンバ ボサノヴァ」など、面白ユニークな歌詞が目立ちますが、時折ハッと気付かされる言葉だったり、明白に情景が浮かぶ言葉が飛び込んできます。この、冗談混じりで真面目な話をしているような、緊張と緩和のある歌が柴田さん唯一無二の魅力だなと感じます。
余談ですが、
見て!「世界はーつ」だって!なんで?
違うよ!「はーつ」じゃなくて
「世界は一つ(ひとつ)」だよ
ここ歌詞見たとき笑ってしまいました。「世界はーつ」だったとしても「なんで?」って感想にはならない気がするんですよね。なんなんだろうこのくだり。
13. 蕾に雷 / 花譜×長谷川白紙
続いて、バーチャルシンガー花譜とSSW長谷川白紙の共作、『蕾に雷』です。素晴らしい楽曲です。
昨年Flying Lotus主催のイベントで強烈なパフォーマンスを披露したことが記憶に新しい長谷川白紙ですが、この曲でも独特のエクスペリメンタルな音色、展開が見られます。ただ、イントロで提示されるボッサ風のリズムが、一部分を除いて継続して鳴っているので、混沌としつつも回帰できるものがあるという点で、全体を通して聴きやすい印象を受けました。
そしてこの曲ではなんといっても、花譜の多彩な声が耳に残ります。語尾でクイっとピッチが上下するような歌い方や、掠れながらもしっかりと発せられる震え声など…。また、歌にとどまらず、「んっ」「ぉあいっ」「ちょっ」など、ところどころで聴こえる捉えどころのない声もユニークです。"バーチャル"シンガーながらも、非常に人間っぽいというか、"身体"を有しているからこそできる不確実な表現が見られ、それがとても魅力的だと思いました。
14. Softly, as in a Morning Sunrise / Tigran Hamasyan
アルメニア出身のジャズピアニスト、Tigran Hamasyanのアルバム『STANDART』から一曲。スタンダード曲のカバーアルバムとはいえ、彼のオリジナリティがとめどなく溢れています。緻密に構築されたスリリングな演奏から、聴き馴染みのあるスタンダード曲のメロディーが浮かび上がってくる様相は圧巻で、聴いているだけで緊張感から息が詰まりそうになります。
個人的に大好きなのは、終盤(上の音源では5:00あたりから)、ピアノとドラムが全く異なるリズムで、ポリリズム的に並走する箇所です。(ポリリズム"的"というのは、何度聴いても譜割りが解読できなかったのでお茶を濁しています…笑)
この幾何学的なパートからドラムがピアノに滑らかに合流し、クライマックスに突入していく展開は本当に痺れました。
ティグランは、エクストリーム・メタルバンドのメシュガーに影響を受けていることが知られていますが(参考:TOWER RECORDS ONLINE)、この曲のプログレっぽい激しさは成程、ジャズの枠組みではユニークな存在だなと思います。もっと聴き込んで、魅力について探求していきたいです。
15. Worldwide(feat. JPRK) / edbl & Kazuki Isogai
最後にご紹介する『Worldwide』は、ロンドンのビートメイカーedblと、日本のギタリストKazuki Isogaiの共作です。
edblは、同じくロンドン出身のTom Mischも想起させるような、洒脱で爽やかなR&Bサウンドを特徴としています。そしてKazuki Isogaiは、個人的にはやはりベッドの上でJust The Two of Usを弾く動画のイメージが強いのですが、世界各国でのツアーを経験している(参考:P-VINE)とのことで、世界的にその技術が評価されているようです。
曲を一聴すると、とにかくさっぱりとした心地良さに包まれます。
Kazuki Isogaiの歌うようなギターソロ、レイドバックしたバッキングはビートに綺麗にハマっており、また、全ての楽器(トラック)の一音一音が、一番気持ち良いタイミングで鳴っているような印象を受けます。何度聴いても胸焼けしない、非常に優れたチルサウンドですね。
以上15曲、選曲と感想を書き連ねてきました。楽曲情報の誤りや、解釈の違和感等がありましたら、コメント等でご指摘いただけますと幸いです。
2023年も元気に、たくさんの音楽を楽しめるような年にしたいです。お読みいただきありがとうございました。